あなたの楽曲制作にヒントをもたらす数々のノウハウ記事に加え、膨大な動画コンテンツは制作トレンド&Tipsの集大成!
これまでエンジニアを中心にNeumann KHシリーズを使って頂いた印象をインタビュー取材してきましたが、今回は現役で活躍しているトラックメイカーで様々なアーティストに楽曲提供やプロデュースをしながら、自らもアーティスト・TALKBOXプレイヤーとして多彩に活動するJUVENILE氏に、Neumann KHシリーズを試して頂きました。
自ら研究好きと称し音に対して並々ならぬこだわりを持つJUVENILE氏は、以前の取材でもDSP補正機能を持つNeumann KHシリーズなどのモニタースピーカーに強い関心を持ち、導入を検討しているということを語っていたのですが、実際使ってみた印象はどのようなものだったのでしょうか。
今回は移転したばかりの新しい制作スタジオでNeumann KH 80 DSPとKH 750 DSPを設置して頂き、さらにはMA 1でのDSP補正も実施して頂いた印象を語って頂きました。
モニタースピーカーの変遷
Rock oN : JUVENILEさんが初めて買ったモニタースピーカーは何ですか?
JUVENILE 氏 : モニタースピーカーで初めて買ったのはFOSTEXで、そのあとYAMAHAのMSPシリーズやHSシリーズを使っていました。そのあと大学生頃に8020(GENELEC)を導入しました。導入の決め手は中田ヤスタカさんの影響です(笑)。YAMAHAはフラット感じでしたけど、8020は比較的、元気な印象でリスニングにも使える印象でした。
それからはEpic 5(reProducer)をTeddyLoidさんが使ってて、このスピーカーとてもいいよって薦められて導入しました。Epic 5は今どきの音というか視力がパキッと良くなったような感じですね。
Rock oN : 選ぶ際の基準は何ですか?
JUVENILE 氏 : 時代かなと思います。今使っているEpic 5は今の時代にマッチした、パキッと角がある本当に今どきの音って印象ですね。
Rock oN : モニタースピーカーの音場補正ツールがいくつかありますが、どんな印象をお持ちですか??
JUVENILE 氏 : Epic 5単体で使ってから音響補正用ソフトウェアSound ID Reference(Sonarworks)を使用していてそれはそれで効果はあったんですけど、ヘッドホンで確認する時、インターフェイスのヘッドホンアウトから出てくる音はスピーカー、つまりEpic 5が補正された音をモニターすることになってしまうために毎回補正された音を切らないといけないので、それが面倒でしたね。
Neumann KHシリーズ + MA 1を使ってみて
Rock oN : Neumann KHシリーズに興味を持った経緯を教えて頂ければと思います。
JUVENILE 氏 : それまで使っていた補正プラグインの経験もあって、インターフェイスの音まではヘッドホンと一緒で、スピーカーに設定を記憶して最後のモニタースピーカーから出る音だけが変わるというのが理想だったので、まさにこれだ!という感じですね。
Rock oN : 実際に使ってみた印象はどうでしたか?
JUVENILE 氏 : 正直4インチというスピーカーの大きさの差もあるかと思いますが、高域部分の再生能力はEpic 5よりもパワーが落ちる印象でした。ただ補正をしていないEpic 5よりはKH 80 DSPの方が断然いいですね。下から上まで綺麗に出ている感じで、何よりヘッドホンで聞いた音と差がないのが驚きでした。これまでは全体のバランスはスピーカーでチェックするして、ハイとかローが出ているのを確認するのはヘッドホンの方がわかりやすかったのですが、そういった脳内変換しないでモニターチェックできるのがいいですね。
今スタジオに使っているこの部屋が12畳なので、それを考えると若干パワー不足を感じますが、性能としては十分です。ウーファーが4インチの大きさのスピーカーの中では抜群にいいいんじゃないですかね。
Rock oN : MA 1についてはいかがでしたか?
JUVENILE 氏 : 最初はやり方がわからなくて意外と難しかったですね。測定自体は回数も7箇所と少なくて簡単でしたが、測定に至るまでが難しかったです。
研究好きな性格もあって、自分が出したいボリュームに合わせてローがどれくらいまで部屋が耐えられるか、って感じで、ローエンドのバランスがいいと感じる数字はほんと探りましたね。
部屋の大きさが変わって6畳から12畳に広くなったので、壁とスピーカーの距離も50cm空けたりしてこれで音量が上げられると思ったんですが、今度は部屋の響きが加わってきてしまうのでそこまで音量を上げられないんですよね。
そう考えると意外とベッドルームスタジオってよくできてるんだなって思いました。狭いけどベッドや本棚があって吸音がしっかり出来ているから、そこで補正ソフトウェアでローとかハイを調整すればいいだけなので。
驚きのサブウーファー・KH 750 DSP
Rock oN : それではサブウーファーKH 750 DSPを使ってみた印象はいかがでしたでしたか?
JUVENILE 氏 : これはもうローが出過ぎるほどですね、よくわからず最初いきなり音量が上がっていたので、部屋が揺れるほどで怖くなりました(笑)。KH 80 DSPとのバランスを考えると、80Hzから下は-8dBくらい下げないと鳴らせなくてとにかくローを削るしかない感じだったので、中域から高域を聴きたいバランスに合わせることで、ちょうどよい音量バランスになった感じです。
でもKH 80 DSPとKH 750 DSPの組み合わせでMA 1を使った際の、部屋に合わせて補正されている感じはすごいなって思いましたね。サブウーファーのデメリットとして音の出る場所が違うと良くないと言われますけど、今回はほとんどそれを感じることはありませんでした。KH 750 DSPをガンガン鳴らせるような、広くて設備のしっかりしたスタジオであれば導入するのがいいかなって思いました。
今回12畳のスタジオへの移転があってそのタイミングでNeumannのスピーカーシステムを試してみたので、試行錯誤して難しさも感じながら色々と勉強になりましたね。前の6畳のスタジオの広さでは厳しかったと思います。
おすすめのユーザーは?
Rock oN : 最後に今回のKHシリーズやMA 1をどんなユーザーにおすすめしますか?
JUVENILE 氏 : KH 80 DSPのような4インチサイズだと6畳くらいのワンルームとか自宅で作業している人に向いてますよね。衣装ラックとか本とかで吸音されるので、そこでMA 1を使ってDSP補正するシステムは中級者にはマストかなと思います。
KH 750 DSPとも組み合わせて色々とリファレンス音源を聴いてみたのですが、そこで感じたのはK-POPとかヒップホップとか以外だと、下まで使い切っている音楽って少ないなって思いました。ローが重要なジャンルにはKH 80 DSPだけだと物足りないかなとも思いますので、ダンスミュージックを作りたい方はサブウーファーまであれば完璧ですね。組み合わせて使ってみてもレイテンシーも全く感じないですし、これからの時代は必要になってくるでしょうね。
メーカーHP
NEUMANN
https://www.neumann.com/ja-jp/products/monitors/kh-80-dsp-a-g/
関連記事
音楽家・守時 タツミ氏が語るNEUMANN KH 80 DSPの魅力
サウンドプロデューサー・中條謙自氏が語る、NEUMANN KH 80 DSP導入効果 〜ゲームオーディオとの相性とは〜
「プリプロからポストプロダクションにかけて音作りをかなり詳細までできるように」-NEUMANN KH 80 DSPインプレッション by AAAMYYY-
Neumannスピーカーで作るDolby Atmosの可能性 〜エンジニア米津裕二郎インタビュー〜
サブウーファーとキャリブレーションツールでいかにモニター環境は改善するか?
〜作曲家 和田貴史氏が語る、NEUMANN KHシリーズ導入効果〜
記事内に掲載されている価格は 2023年7月5日 時点での価格となります。
最新記事ピックアップ