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この夏、Elektronのシンセに新しい仲間が加わりました。その名もSyntakt(シンタクト)!
同じシャーシに収められた製品のDigitakt(8ボイス・デジタルドラムマシン&サンプラー)、Digitone(8ボイス・デジタルシンセサイザー)に続き、Syntaktは2機種の良いとこ取り…という範囲には全く収まらないシンセ&ドラムマシンになります。すでに店頭でお手にとられた方も多いと思う本機ですが、夏本番なのにお家から出にくい世情の最中で、あらためてプッシュしたい製品であります。
また、”Elektronって音が良いのは知っているけど、複雑で扱える自信が無いなぁ”とお考えの方にこそ、本レビューに目を通していただきたい!シンプルに見えて複雑。。に見えて、実際は驚く程シンプルなシンセですので、Elektronのボタン配置や印刷の意味を知って頂こうと、SyntaktだけでなくElektron製品の操作方法も改めてご紹介いたします。
二刀流のSyntaktは1台目のElektronにもオススメ!既存ユーザーは手厚いサポートメンバーとしてお迎え必須!
●概要
SyntaktはこれまでのDigitakt, Digitoneと異なり、マシン:楽器が1:1の構成ではなく、1台あればメロディもリズムも出せる優等生マシンです。これから1台ハードシンセを持ちたい方にはとても良い制作の武器になるかと思います。
フレキシビリティ溢れる既存のelektron製品をお持ちの方は、メロディが出せる=ベースサウンドが出せるという事もお忘れなく。DigitaktやDigitoneに任せていたリズムパートはSyntaktが一人でこなしちゃいます。
それではElektron印のアナログドラム&デジタルシンセがどの様に融合しているのか、早速レビューしてゆきます!
箱を開けるとお馴染みの付属品が入っておりますが、SyntaktはDigitaktやDigitoneと比べて電源アダプターの形状が変更になっていました。
小型/薄型になり重量も軽量になっていますので、従来品より可搬性に優れています。(電源ケーブルは変わらず2Pメガネケーブルです。)このアダプターは他のElektron製品も順次切り替わって行くそうです。
電源アダプタを接続して、ヘッドホンを挿して再生ボタンを押せばとりあえず音が出る…と思いきや、初回ロット分にはAバンクの1,2にソングプリセットは登録されていない模様。Elektronへ問い合わせると、一部の初回ロットでソングプリセットが無いものがある様で、マニュアル記載のファクトリーリセットを一度かけるとソングプリセットが現れるとの事。あれ?と思った方はこちらをお試し下さい。
*FACTORY RESETではなくEMPTY RESETをかけると、パターンとサウンドが削除され空のトラックで埋まってしまいます。FACTORY RESETをお選び下さい。
本当はあなたにやさしい、Elektronのボタンとツマミ
備え付けのプリセットを再生して音を聞きながら、マニュアルに載っているダイアグラムを見てゆきましょう。
これまでのElektron製品と同じく、Syntaktはデジタルとアナログの二つの音色またはエフェクトを持ったシンセサイザーです。
技術的な部分は割愛しますが、アナログシンセはトランジスタなどの電子部品で構成されたシンセの事を言い、端的に言えばコンセントから得た”電気の音”の加工や変換、減算または乗算されたものになります。それぞれの電子部品に絶妙な癖があり、それらが最終的に個性的な音色やピッチの揺れ、あるいは音楽的で美しいノイズやディストーションを有します。
Syntaktではドラムトラック、シンバルトラック、ノイズジェネレーター、オーバードライブ回路でアナログ回路が使用されています。
デジタルシンセは読んで字の如く、予めプログラムされた音色を出力するというものです。FPGAで処理された、あるいはROMに収録された音色は、いつ誰がどの様に再生しても寸分狂わず発音されますし、アナログでは回路が複雑過ぎて巨大になりがちなセットも簡単に作成が可能です。Syntaktでは主にシンセサイザー、ドラムトラックで使用されています。
アナログ/デジタルのどちらのドラムもSyntakt内でカバーできる事は選択肢が広がって非常に嬉しいですね。そしてプレイする際はその垣根を越えて、気にせず好きな音が鳴るトラックを使って下さい。どちらも使いこなして、ライバルに差をつけろ!
●インターフェイス
続いてインターフェースです。Elektronユーザーにはお馴染みの、また非ユーザーにはなんのこっちゃのメインディスプレイ、押し心地の良いボタン類、直感的なエンコーダー類を見てゆきます。
先ほどのアナログ/デジタルはトラック別に分かれており、シーケンスの上段1〜8トラックがデジタル、下段左側9〜12トラックがアナログとなっております。
このうちアナログの1トラックはシンバル専用となり、ハイハット、シンバルに始まりカウベルやノイズもこのアナログシンバルトラックで扱えます。
下段右側の13〜16はデフォルトでリトリガーがアサインされています。パフォーマンスでの使い勝手はもちろんですが、地味に嬉しいのはサウンドメイクの段階でリトリガーを押しながらパラメーターを調整する事で、ポチポチと連打せずにスピーディーに作成できる事。これは便利です。
Syntaktには無数のボタンとエンコーダー(つまみ)が配置されていますが、これら全てのボタンを操作しても全ての機能にアクセスする事はできません。普通にボタンを押したりエンコーダーを回せばその直下に書かれている灰色のパラメーター、あるいはボタンに直接書かれているセクションを操作出来ますが、赤色の”FUNC”ボタンを押しながら各ボタンを同時押しすると、赤字で表記されているパラメーターを操作する事が出来ます。
この”押しながら”のコマンドが非常に多いのはElektronあるあるかと思います。赤色のFUNCボタンでアクセスできるセクションはシステム設定、ベーステンポ、ルーティングのアサインなど。これらはパフォーマンス中にうっかり手が触れてしまって設定が変わっては困るセクションなので、FUNCで軽くロックされているような仕様となります。プリセットパターンの呼び出しもFUNCボタンを押しながらとなりますので、店頭で試奏してみたいけど、Elektronはさっぱりわからん!という方はFUNCボタンも押してみてくださいね。
●ディスプレイ
そしてメインディスプレイですが、ここに全てのパラメーターの情報が…やはりありません。現在選択されている音色/エフェクト/ミキサーなどのパラメーターの一部が表示されています。
各項目ごとに1〜2ページ分のコントロール項目があり、2ページあるパラメーターは該当するボタンを押してページめくりという操作です。(Filter, Amp, LFOなどが2ページあります。)
理解が深まれば普通のシンセではこんなところまでアクセスできないぞ…すげぇ!、というセクションのパラメーターを触ることができますし、インスタントに触りたい方には1ページ目のメジャーなパラメーターだけでも十分遊べちゃいます。
ライブパフォーマンスでも自宅でも。場所を選ばずフルパフォーマンスを発揮!
この辺りで、筆者だいぶ楽しくなって参りました。お店の閉店後にじっくり収録音をブラウジングしてみたくなったので、SyntaktとコンピューターをUSBで繋げて見渡しの良いOverbridgeで一通り聴いて行こうと思いつきます。
Syntaktの本体設定をOverbridgeモードに切り替え、コンピューターからOverbridgeを起動。即座にオーディオデバイスとして認識され、8in / 20out (!)のオーディオインターフェースとして認識されました。
そしてDAWからOverbridgeプラグインを呼び出し、ハードシンセをコンピューター画面とシンセ本体の双方向から操作できるのは快適&画期的で、一度使ってしまえばOverbridge無しには戻れない体になってしまいます。
収録楽器のブラウジングはマッハですし、プリセットの保存&呼び出し、ラベリングも非常に簡単です。Elektron製品をコンピューターのシステムに組み込むユーザーにとって有り難い事この上なし!
モジュラーシンセ復権の流れからNo Computerの風潮は確かにあります。が!便利なものは便利。ここでもアナログ/デジタルの垣根を越えてハイブリッドを乗りこなし、ライバルに差をつけろ!
Elektron Transferのダウンロードはこちらから OverbridgeのダウンロードはこちらからAbleton Live経由で全ての収録キットを視聴して、Elektronの崇高な音色に時に笑い時に涙し、夜は更けて行ゆきます。
お気に入りや使えそうな音色を各トラックにアサインし、いよいよビートメイクとしたその時、筆者の手が止まりました。
『・・・格好良い音とは?』
渋谷店、梅田店に展示機がございますので、みなさまぜひお手に取ってお試し下さい!
この先は君の目で確かめてくれ!
Writer. イタリー多田
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