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Feb.2015
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GENELEC 新製品発表会 NEWスタイル3Wayメインモニター 8351A と第2世代SAMシステム

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2015年2月5日(木)に行われたGENELECの新製品発表会をレポート。

第二世代のSAMシステムを搭載したニアフィールドモニター『8330』『8320』、それらとベストマッチするウーファー『7350』。そしてAES 2014で発表されたされた大本命の3Wayスピーカー『8351A』の試聴会も兼ねた新製品発表会が開かれるとあって意気揚々と会場へ足を進めた。

会場

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今回の会場は都内お茶の水にあるアストロスタジオ。

ここはaudio-technica『テクニカハウス』の1、2階にあるスタジオだ。ハイレベルな音響環境とレコーディング設備を備えており、スピーカーの試聴をするには絶好の環境だ(気になるスタジオ内の様子はまたのちほど)。

はじめに

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冒頭はGENELECの代理店 オタリテックの 砂田 氏(営業部長)からGENELECの最新機種のラインナップとその経緯が語られた。

2014年だけで8機種もの新製品をリリースしたGENELEC。その開発力と生産力はさすがだ。ワールドワイドでシェアを広げる実力あるブランドのパワーを感じる。

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8351Aの開発秘話として非常に興味深いエピソードも同時に紹介されたが、それはこのあと8351Aのレビューでお見せしよう。

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さて続いては「GENELECのことならこの人に訊け」。プロダクトマネージャーの 石井 氏 からこの度バージョン2へと進化した『GENELEC SAM™ スマート・アクティブ・モニタリング・システム』(通称 : SAMシステム)の詳細な説明がなされた。

SAMシステムは専用インターフェイスを介してスピーカー自体をネットワーク接続し、ネットワーク内のスピーカーの制御を可能にするシステム。

スタジオの形状やリスナー位置、ルームアコースティックなどに関わらず理想的なモニタリング環境を完成させる期待のテクノロジーだ。

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具体的には、モニタールームに設置したスピーカーから測定用信号を発し、それを専用マイク(8300A)でキャプチャー。それを専用ソフトウェア GLM™(GENELEC Loudspeaker Manager™)が解析しネットワークで繋がれた全てのスピーカーを制御する。

測定音をマイクで拾ってそれをソフトウェアが補正するという技術は他社からもリリースされているが、SAMシステムはソフトウェアで音源に補正EQをかけるのではなく、SAMシステムは様々な要素でスピーカー自体の動きを理想的に制御するため、非常に自然でスピーカーの特性を最大限に活かしたモニタリングが可能になる。

ネットワークを組んだスピーカーをそのシステムごと理想的なモニター状態へチューニングできることがGENELEC SAMシステムの最大のメリット。ガラス張りの部屋、形がいびつに入り組んだ部屋などでもベストなモニタリング環境を構築できる。ネットワーク化できることを考えると、サラウンドなどの複数のスピーカーが必要な環境でそれがさらに活きる(最大30本のスピーカーを連結可能)。SAMシステムのことがとてもよく分かるムービーがこちら。

これは決して難しいものではなく、ユーザーはむしろシンプルな操作で理想的なモニタリング環境を作り上げることができる。

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AES 2014で発表されたSAMシステム及びその制御ソフトGLMのv2詳細は以上のような内容になっている。

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8351A

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いよいよ試聴会が始まった。その感想を述べる前にまずは8351Aについておさらいしておこう。

8351Aは3wayメインモニター。中央のユニットはHighとMidの2way同軸である。同軸スピーカーのメリットは、ユニット間に距離がある一般的な非同軸スピーカーと比較して、音楽軸のズレによる位相の狂いが少ない点だ。これは2つのユニットの音が同点位置から発音されることにより、複数ユニットからそれぞれ放たれた音が耳に届く距離がほぼ等しくなるからだ。

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また8351Aのエンクロージャーのサイズは8inchウーファーの同社8050とほぼ同等でありながら、周波数再生帯域はウーファー10inchサイズの製品と同等の32Hz〜40kHz(-6dB)を誇る。コンパクトサイズながら十分なスタジオの小型化が進む昨今の制作シーンに求められるメインスピーカーと言えるだろう。

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8351Aはウーファー・ドライバー2本をフロント・バッフル置くに隠すことにより、フロント・バッフル全体を一つの指向性制御ウェーブガイドとして用いている。これにより間を空けて配置されたこの2本のウーファーから放たれるウーファー周波数の音は非常に優れた指向性を持つことになる。

例えばHigh、Mid、ウーファー全てが同軸上に置かれていた場合、ウーファーの動作がHighの放射する音声にドップラー偏移を発生させる場合があるが、8351Aのこの設計であればこの心配は皆無だ。

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メーカー資料によると、2本のウーファーの中心間の距離は268mmだが、音の出口であるスリットは380mm離れている。これはウーファーとミッドレンジとのクロスオーバーポイントでの最高動作周波数470Hzの0.56波長に相当する。

この距離は短いものだが、この2本のウーファーのシステムは垂直面で直系457mmもの大光景ウーファードライバー1本に似た指向特性を持つという。

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この素晴らしき新発想と新提案は、GENELEC CEOの Ilpo Martikainen 氏の頭の中にあったそうだ。2014年、オタリテック 砂田 氏との会食の時にIlpo 氏が欠いたメモ書きに8351Aの技術の原案が記されていた。

試聴

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当日の試聴環境はPCからのハイレゾ音源再生。USB経由でネットワークオーディオプレイヤーのMarantz NA-11S1につながれ、そこからAES/EBUで8351Aにデジタル信号が送られる。

 

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もちろん最新v2のSAMシステムで試聴室の特性に完璧にチューニングされた状態だ。

クラシック、ジャズ、パーカッションが主の民族音楽、そしてJ-POP。スピーカーの特性を知るためのリファレンス楽曲を次々と流していく。

音源の空気感まで再現する優れた解像度や正確無比な位相バランス。そして8351Aはコンパクトなサイズ(H 452 × W287 × D278 mm)から思いもしないような豊かな低域を生み出す。低域のダンピングも非常に良く、重低音のシンセベースやほとんどリミッティングがされていないバスドラムの低域のアタックまでを濁り無く再生する。

 

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同軸スピーカーは一般的なスピーカーよりも0.5m短い距離でスイートスポットを作ることができる。これらのメリットも合わせることで、小スペースでも十分な原音モニタリングができるレコーディング用途のメインモニターとしての実力を備えている。

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気になる価格は、1本 ¥572,400(税込)。8351Aだけでも使えなくはないが、その実力を十分に発揮するためにSAMシステムの導入は欠かせないだろう。基本となる『GLM 2.0キット(8300-601)』¥91,800(税込)と共にステレオペアで導入すると想定して¥1,146,600となる。

SAMシステム最小モデル

続いて、同社8030および8020と同サイズのSAMシステム対応スピーカー『8330』『8320』をコントロールルームで試聴した。

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『8330』『8320』は8000シリーズと同フォルムの 2Way Biデジタルアンプモデル。

これまでSAMラインではウーファー6.5インチの8240Aが最小モデルだったが、それを超えるミニモデルがウーファー4インチの8320A(右)になる。サイズ的には8020と同じで、再生周波数特性55 Hz – 23 kHz (-6 dB)、アンプ出力 Woofer 50 W + Tweeter 50 W となっている。

もうワンサイズ上の8330A(左)は5インチウーファー、45 Hz – 23 kHz (-6 dB)、Woofer 50 W + Tweeter 50 W。8030Bと同サイズ。

GENELECではおなじみこのデザインのキャビネットは他の機種同様、リスニング・ポイントによらず優れた周波数レスポンスを実現するDCW(Directivity Control Waveguide)とMDE(Minimum Diffraction Enclosure)が採用されてる。

この度の小型モデルの登場は、あまり大規模なルームを持てないMAスタジオや個人作家、果ては個人ユーザーまでターゲットにしたSAMシステムの広がりを予感させる。もちろん音響的に悪環境の中継車の中でも有効だろう。

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ニアフィールドスピーカーの 8330 と 8320は聴き慣れたGENELECサウンド。しかしSAMシステムによりこのコントロールルームの音響特性に完璧にチューニングされている。両者ともに実に解像度が高く位相の整った音だ。

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モニターセレクターのスイッチを押しながら8351Aとも聴き比べてみる。

甲乙をつけるものではないが、どのモデルもモニタースピーカーに求められる高いレベルでの仕事をしている。

最も小型の8320の大健闘ぶりに感心した。スピーカーの持っているポテンシャルが高いことはもちろん、SAMシステムによってこのコントロールルームの条件に最適化されていることも大きな要因だろう。

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8330 と 8320はそれだけでも購入可能だが、8351Aと同じくSAMシステムと共に導入することでその本領を最も発揮する。

それぞれバラで購入するよりも最大7万円以上もお得なバンドルセットを選ぶのが得策だ。

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この他8330や8320と共に使うことが想定されたSAMシステム対応サブウーファー7350も展示された。残念ながらその音を聴くことができなかった。次は是非SAMシステムで小口径スピーカートともに調整されたサウンドを聴いてみたい。

最後に

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変わりゆく製作現場のスタイルとニーズに応える形で各社から様々なモニタースピーカーがリリースされる中、GENELECが新しく提案してきたのが2Way同軸&ウーファーの8351A。そしてSAMシステムだ。

これまでエンジニアは部屋に置かれたスピーカー(から出る音)に合わせてルームアコースティックを調整し、最適なモニタリング環境に近づける努力を続けてきた。

できる限りの調音を部屋に施すことはスタジオ構築の基本中の基本ではあるが、しかしこれからはSAMシステムによりスピーカーが部屋に合わせて音を最適化してくれる。

いつでもどこでもクセの無い正確な音はエンジニアリングをシンプルにし、イメージ通りの仕事をすることにつながる。

全く新しい制作環境の構築方法。このGENELECの提案をぜひみなさんにもご体験いただきたい。

Writer IH富田

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    記事内に掲載されている価格は 2015年2月11日 時点での価格となります。

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