プロにお勧めのChoir(クワイア)音源 動画レビュー第3回：バリエーション編

サウンドプロフェッショナルがクワイア音源を選ぶための試聴動画レビュー

聖歌隊・合唱隊を意味するChoir(クワイア)の響きは、楽曲に神聖さと人間の生命力を吹き込んでくれます。現代はクワイア音源が数多くリリースされており、映像音楽やゲーム音楽で頻繁にそのサウンドを聞くことができます。映像に関わる音楽を制作されている方であれば、一つは手に入れておきたいクワイア音源。

レビュー第3回は、これまでにご紹介したリアル志向音源とアンビエント志向音源を基準に見据えた、クワイア音源のバリエーションを7製品ご紹介します！

BEST SERVICE / MYSTICA

大編成クワイアとは趣の異なる、8人編成の女性クワイア音源

MYSTICAは、グレゴリオ聖歌を歌う男性コーラス音源『CANTUS』の姉妹製品に当たる、8人編成女性合唱団によるチェンバー・クワイア（室内合唱）音源です。グレゴリオ聖歌の特徴である単旋律の斉唱を中心に制作されており、美しさが際立つ母音のレガート演奏が可能です。また、3種類のアーティキュレーション（スロー／ファスト／スタッカート）をもつ24個のワード（単語）、斉唱にリアリティを加えるブレス／リリース・サンプルを併用することで、表情豊かに歌い上げることができます。さらに、ライブラリに用意されている単語／音節を組み合わせて「フレーズ（歌詞）」を作成し、自由なメロディで歌わせる”Word Builder”機能を搭載。用意されている単語や音節は、CANTUSとのマッチングを考慮して全て共通の語句が用意されているため、両製品の相性は抜群です。

使用されているボイス・サンプルは、CANTUSと同様に可能な限りドライなサウンドでレコーディングされており、求める空気感に合わせたリバーブセッティングが可能です。両製品を併用することで、自由度の高い混声合唱を構成することができます。その他、90種類のグレゴリアン・フレーズ（オーディオファイル）を収録したパッチや、クラスタやウィスパーボイスなどの、エフェクトボイスを収録したパッチ、ボイスサンプルやシンセパッドなど複数のサウンドをレイヤーして構築されたテクスチャ・パッチも用意されています。

MYSTICAは、大編成クワイアとはまた趣の異なる、敬虔な旋律を粛々と歌い上げるのにも最適なクワイア音源です。

MYSTICA 試聴

Canon(カノン)
声に透明感と芯の太さがあり、一人一人の声が際立って聞こえます。どっしりとした安定感が、楽曲を力強く崇高に押し出してくれます。あらかじめ用意されている単語／音節を組み合わせて歌詞を作成する”Word Builder”機能も試してみました。レガート時に母音だけを発音する仕様はSTREZOV SAMPLINGと同様で、とても自然な歌詞歌唱を実現しています。

Big Chorus(大合唱)
可能な限りドライなサウンドでレコーディングされた、少人数の聞き取りやすい発音と、ピッチの安定感に優れた音源です。動画の参考曲では内蔵のリバーブを深めにかけていますが、求める空気感に合わせてリバーブのセッティングが可能です。

Battle(バトル)
単旋律で演奏しても、ソロボーカルとして成り立ってしまうほどの声の太さです。声の下限音域が他の女性クワイア音源に比べて狭め（A2〜A4）なので、同社の男性グレゴリオ聖歌隊音源「CANTUS」を使うと、お互いの音域を補完できるので併用がお勧めです。

BEST SERVICE / CANTUS

グレゴリオ聖歌を歌う修道士たちの声を収めたコーラス音源

CANTUSは、グレゴリオ聖歌を歌うモンク（修道士）達の歌声に焦点を絞った、他に類を見ないリアリズムを備えたクワイア音源です。使用されているボイス・サンプルは、可能な限りドライなサウンドでレコーディングが行なわれました。グレゴリオ聖歌と聖堂の空間がもたらす” 反響” は切っても切れない関係であるため、プロジェクトによって最適なリバーブを設定できるように配慮されています。荘厳で厳粛な空気を生む、グレゴリオ聖歌の独特な単旋律の斉唱を再現するために、美しい母音のサスティン・レガート、24 種類のワード（単語）、演奏にリアリティを加えるブレス／リリース・サンプルを収録しています。

MYSTICAと同様に”Word Builder” 機能を使用して、ライブラリに用意されている単語／音節を組み合わせた「フレーズ（歌詞）」を作成し、入力したメロディで歌わせることが可能です。その他、トータル60 分に及ぶ400 種類のグレゴリアン・フレーズを収録したパッチ、ボイスサンプルやシンセパッドなど複数のサウンドをレイヤーして構築されたテクスチャ・パッチも収録しています。

CANTUSはリアリスティックにグレゴリオ聖歌のメロディを再現するだけに留まらず、ミステリアスさやダークさをも纏った、インスピレーションの源として活躍するでしょう。

CANTUS 試聴

Canon(カノン)
厳粛なイメージを持つグレゴリオ聖歌の中でも、CANTUSの歌唱には優しさがあり、ポップスのコーラスにも使えてしまう懐の広さがあります。過度な男臭さがないので、様々なジャンルに活用できます。

Big Chorus(大合唱)
MYSTICAの試聴デモで作成した歌詞データをエクスポートして、CANTUSでそのまま読み込む事が出来ました。ソプラノ領域まで歌いたい楽曲では、歌詞データ互換性の面からもMYSTICAとの併用がお勧めです。

Battle(バトル)
バトルを遠くから俯瞰した、客観性を感じるトラックになりました。男気あふれる STREZOV SAMPLING / WOTAN MALE CHOIR を「勇者」とするならば、CANTUSは「賢者」のイメージを表現するのに適した音源ということが分かります。

BEST SERVICE / KWAYA

サバンナの大地に響く歌声、アフリカン・クワイア音源

KWAYAは、表情豊かな歌声と詠唱を提供するアフリカン・クワイア音源で、ウガンダより様々なアワードを受賞したクワイア”Aba Taano”を招いて制作されました。本製品のメインとなる”Kwaya, African Voices”インストゥルメントは、マルチサンプルを収録。クワイアを構成する女性2人／男性4人の歌声は全てソロでサンプリングされており、個別にボリューム／パンの調整に加えてミュートも可能なため、ソロ・インストゥルメントとしても使用することが出来ます。”PHRASE ARRANGER”機能を使用して、母音や40種類の音節を最大8個まで自由に組み合わせたフレーズを20種類作成し、キースイッチによる切り替えに対応。ナチュラルなレガートによる演奏が可能です。

バラエティに富んだアフリカン・サウンドを多数収録！
SOUNDSCAPES カテゴリにはシンセパッドやカリンバ、パーカッション、FXなど最大4種類のサウンドをレイヤーして構築された、サウンドスケープ／テクスチャ・インストゥルメントを16種類収録しています。オートメーションによるダイナミクス（エクスプレッション）操作や、サウンド・レイヤーごとのボリューム／パン操作によって、動的なサウンド生成が可能です。

KWAYAは、映像やゲーム向けの楽曲製作はもちろん、アンビエントやダンス・トラックにアフリカン～トライバル系のエッセンスを加えたいときにも活躍するソフト音源です。

KWAYA 試聴

Canon(カノン)
ピッチの揺らぎがワイルドなリアリティを生み出しています。レガートした際のポルタメントは音程が近ければスムースに、そして跳躍する場合には自然かつダイナミックなポルタメントが得られました。

Big Chorus(大合唱)
母音や40種類の音節を最大8個まで自由に組み合わせ可能な、PHRASE ARRANGER機能を駆使してみました。レガートは第1回レビューのSTREZOV SAMPLINGと同様に、母音だけを発音する使い勝手の良い仕様になっています。KWAYAの子音はたっぷりと長めにサンプリングされており、それがリアリティとワイルド感を印象付けています。

Battle(バトル)
少人数によるポップス寄りの歌声で、エスニックのフレーバーだけでなくロックなどにも合う音源です。男性・女性ボーカルに個別のボリュームが用意されているので、曲調によってボーカルを使い分ける事も可能です。

IMPACT SOUNDWORKS / VOCALISA:SLAVIC WOMENS CHOIR

ブルガリアン・スタイルのクワイア音源

VOCALISA:SLAVIC WOMENS CHOIRは、作曲家視点で制作することをスローガンに掲げるImpact Soundworksによる、スラヴィック（ブルガリアン・スタイル）のクワイア音源です。女性クワイア（ソプラノ、メゾ、アルト、ソリスト、フル・クワイア）と、最も多用される音節、子音、FX（ブレス、クラップ、クラスター）を収録しています。伝統的なクラシック・オーケストラのクワイアとは歌唱法が大きく異なるので、サウンドトラックに民族的なエッセンスを注ぎ込むことができます。

Vocalisaのインターフェースは、各セクションのパフォーマンスとサウンドをコントロールすることが可能です。アーティキュレーションやシラブルは、キースイッチでトリガーしたり「グリッドモード」を使ってシーケンスすることも可能です。また、コンプレッサー、ステレオ幅コントロール、EQ、コンボリューションリバーブなどのグローバルエフェクトを搭載しています

VOCALISA 試聴

Canon(カノン)
VOCALISAは、ブルガリアンボイス独特の倍音が抑えられた、マイルドな音色が特徴です。動画ではグリッドモード（シーケンス）で歌詞が変わって行く様子を確認できます。

Big Chorus(大合唱)
VOCALISAは、eh, mah, yah, ree, shteh, svah, ohのワードと4つのアーティキュレーションを備え、一般的なクワイア音源に近いサウンドカラーを持っています。3度堆積のコードボイシングではクラシカルなサウンドの印象を受けますが、4度堆積やテンションコードを活用すると、ブルガリアのフレーバーを感じる事ができます。

Sustainable PAD
第2回でレビューした、アンビエント志向の参考曲がVOCALISAの音色にマッチしました。複数人の歌唱によるディチューン効果が絶妙で、単音の中に心地良いにじみがキャプチャされています。単音を持続させるアンビエントにもお勧めです。

SOUNDIRON / REQUIEM LIGHT SYMPHONIC CHOIR / KP EDITION

映像やトレーラーに適した、大迫力の聖歌隊音源
REQUIEM LIGHT SYMPHONIC CHOIR / KP EDITION （旧名称：REQUIEM LIGHT PLAYER EDITION）は、強力な汎用性を持つフルレンジの聖歌隊音源です。豊かなダイナミクス、フォルティッシモの高揚や、繊細で柔らかいメロディックなディテールが魅力です。

収録サウンドのレコーディングには、サンフランシスコで最も歴史があり美しく壮大な大聖堂を使用。空間の響きを大切にしながら、歌い手から「近い場所」、「中間くらいの場所」、「遠い場所」にマイクを配置して収録。2人のソリストと合唱団（男声＆女声）による、主要な母音（Ah、Eh、Oh など）や、数十にも及ぶ音節、フレーズ、ラテンベースのチャント、また、ブレス、ストンプ、クラップ、スイープといった効果音的なサウンドも収録しています。また、レガートにはトゥルー・レガート・サンプル（レガートを実際に歌い、録音したもの）を採用しているので、音のつながりを「再現」するのではなく、歌ったそのままのサウンドを「再生」できるのが特徴です。

フレーズ・ステップシーケンサーを含む、直感的で柔軟なインタフェースで各種パラメータをコントロールします。IRリバーブを含む、複数のエフェクトをインサートできるFXラックで積極的な音作りも可能です。映画、トレーラーをはじめとする映像、壮大なオーケストラ楽曲の制作など、大迫力の聖歌隊が必要な全ての場面に最適な音源です。

REQUIEM LIGHT 試聴

Canon(カノン)
数あるクワイア音源の中でも特別な熱量を持った、フルレンジの大合唱団サウンドです。力強い歌唱が求められるシーンでは、特にこのREQUIEM LIGHTが頼りになります。

Big Chorus(大合唱)
アンサンブルの中に、女性ソプラノと男性テナーのソロを控えめに配置することで躍動感を加える事ができました。深めのビブラートは曲を選んでしまうケースもありますが、ハマった時には絶大な効果を発揮してくれます。

Battle(バトル)
歌唱フレーズを組み立てる「フレーズ・ステップシーケンサー」を活用しました。滑舌の良さが特に抜群で、切れ味良いフレーズが自然につながっているのに驚きです。実用性の高いフレーズ歌唱を提供してくれる機能です。

SOUNDIRON / OLYMPUS SYMPHONIC CHOIR

混声合唱の決定版ライブラリ

OLYMPUS SYMPHONIC CHOIRは、VENUS WOMENS CHOIR(女性クワイア音源) と MARS SYMPHONIC MEN’S CHOIR(男性クワイア音源) をバンドルした、混声合唱の決定版ライブラリです。力強い存在感と優れたアーティキュレーション、自然なレガートがパッケージされています。33人の女声合唱と30人の男声合唱、そして8人のソリストを、ラテン語とスラブ語の標準的な母音と子音をフルレンジで収録。ah、eh、oh、oo、mm といった母音をレガートで表現できるほか、シャウト、スイープ、クラスターなど、スタンダードかつユニークなコーラルエフェクトも豊富に収録しています。

VENUS WOMENS CHOIR

圧倒的柔軟性を誇る、女性クワイア音源
映画やテレビのスコアリング、オーケストラアレンジなどの音楽制作のために設計、絶妙な感覚でレコーディングされた、パワフルでフレキシブルな女性合唱アンサンブル・ライブラリです。サンプルは、SOUNDIRONお気に入りの教会で、サンフランシスコ交響楽団、サンフランシスコオペラ、サンフランシスコ合唱団、そして「Volti」のシンガーから厳選された33人で、10日間かけてレコーディングされました。

基本パッチは、Neumannマイクロフォン（12本のラージダイアフラム）のブレンドからなる2つのマイクポジション（Stage＝クローズマイク ／ Hall＝ファーマイク）から選択します。母音と子音サウンドのほか、シャウト、スウィープ、クラスター等も収録されています。

VENUS WOMENS CHOIR 試聴

Canon(カノン)
マルカートのプリセットは1つのインスタンス内で2レイヤーをミックス可能で、トップノートを「OoとMmのミックス」、その他を「OoとAhのミックス」に割り当てしました。33名合唱団のスケールを感じるゴージャスなクワイアです。

Big Chorus(大合唱)
レガートのプリセットを試しました。大人数がいっせいにポルタメントする、迫力のあるレガートです。低音セクションは細かい譜割りに合わせて、立ち上がりの速いスタッカートのプリセットを使用しています。

Battle(バトル)
音程1音ずつにSyllable（音節）をキースイッチで割り当て、歌唱させています。2つのマイクポジション（Stage＝クローズマイク ／ Hall＝ファーマイク）のうち、曲の前半ではクローズマイク、後半でファーマイクを演奏していますので、マイクの近さや響きの違いをご確認下さい。

MARS SYMPHONIC MEN’S CHOIR

圧倒的威力を誇る、男性クワイア音源
Mars Symphonic Men’s Choirはサンフランシスコ交響楽団、サンフランシスコオペラ、サンフランシスコ合唱団、そして「Volti」のシンガーから厳選された30人で、オークランドヒルズのモントクレア・プレスビティリアンにて10日以上かけてレコーディングされました。

ライブラリ内の全てのサステイン・アーティキュレーションには3パートのポリフォニック疑似レガートが使用されます。MARSにはアンビエンス、ドローン、テクスチャー、FXコンテンツからなる独自のボーナスコレクションも収録されています。

MARS SYMPHONIC MEN’S CHOIR 試聴

Canon(カノン)
これまでの試聴と同じ4声のアレンジで、大群衆による大合唱が出来上がりました。最大規模のスケール感を演出するのに最適な、本製品ならではのサウンドです。

Big Chorus(大合唱)
あらかじめ用意された単語をキースイッチで選び、音程を付けて演奏しています。レガート演奏した際には単語の頭に戻らずに最後まで発音する、自然な歌唱が可能です。力強い圧倒的な存在感が特徴です。

Battle(バトル)
VENUS WOMENS CHOIRの試聴と同様に、音程1音ずつにSyllable（音節）をキースイッチで割り当てています。ボイスサンプルが切り替わる際の違和感が少なく、Syllableのつながりと滑舌の良さが感じられます。

バリエーション編 ダイジェスト-1(Canon)

バリエーション編 ダイジェスト-2(Big Chorus)

バリエーション編 ダイジェスト-3(バトル)

クワイア音源レビュー 総まとめ