※弊社メールマガジン「ROCK’in MAILMAN」2008.7.4号〜2008.12.19号まで連載された、高山博さんによるコラム「東京音楽散歩」を再掲載しています。

![]()
第五回 中央線ぶらぶら歩き
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
中野ブロードウェイ(掲載日時:2008年10月31日)
今回は、目的地を決めずに歩くことにする。どのあたりにしようかと考えたのだが、やはり東京で音楽といえばここ、中央線沿線にする。このあたりは、古くか ら文化の中心地、戦前戦後と武蔵野を愛する文人画家などが居を構え、沿線には美大や音大なども多い。さらに、60年代ごろからは、演劇やフォーク、ロック などの若者文化の発信地としても知られるようになった。私自身、大阪に居た十代の頃に、今中央線沿線が熱いとの噂を聞き、一体どんな所だろうと、見物のた めに上京したのを覚えている。今から考えると、その頃から音楽散歩をしていたのだ。
![]()
とにかく今回はまったくのアドリブ、特にあてがあるわけでもないのだが、“濃い”ので有名なエリア、まぁなんとかなるだろう。 というわけで、いつものようにリュウジくんと待ち合わせ。場所は、中野ブロードウェイの「タコシェ」にした。ここは、独特の品揃えで知られる本屋兼雑貨 屋。店内には、サブ・カルチャー関連の書籍や画集などが所狭しとならんでいる。音楽書も多いし、ニュー・ウェーブ、パンク系のインディーズCDなども置い ていて、見ているだけでも飽きることがない。
![]()
せっかくなので、中野ブロードウェイを散歩する。ここは、マンガ古書などを扱う“まんだらけ”が成功して以来、マンガ、同人誌、フィギュアなどのショップが次々に進出して有名になった。実際歩くと、やはりその手の店が多い。普通の学生服屋かと思うと、コスプレ用品店だったりする。別にその趣味がなくとも、店先を眺めながら歩いているとなかなか面白い。平日の昼間ということで、東京音楽散歩Vol.5さほど客数は多くないのだろうが、それでもまずまず賑わっている。よくオタク・ファッションなどと揶揄されるのだが、そういった外観の人にはあまり遭遇しない。むしろ、カップルの比率が高く、女性も多い気がする。こういうのは、実際に行ってみないとわからないことだ。
![]()

![]()
その中野ブロードウェイだが、元々は1966年に再開発で建てられた複合ビルだ。4階までは商業施設で、5階から10階がマンションになっている。当時と しては最新の高層マンションで、いわば今の六本木ヒルズのようなものだったらしい。青島幸男や沢田研二も住んでいたとのこと。ビルの裏側からは、その居住 階を望むことができる。なるほど、年月を経ているが高級感がある。屋上は庭園になっていてプールやゴルフ練習場もあるらしいが、住人でないと中に入れない のが残念なところ。
![]()
そんなことを思いながら店内に戻ると、今度は昭和風の意匠ばかりが目に入ってくるから不思議だ。一階の吹き抜けには、擬ロココ調の飾り窓やベランダなど、開業当時を思わせる装飾が、そこここにある。かつての最先端と、今のマニアックが、仲良く並んでいる。
![]()
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
正直、中央線沿線は上京時から苦手な地域なんですが、諸事情で今年、中央線沿線に引っ越しまして中野も割と近所になりました。初めてとなる中野ブロードウェイでしたが、うーん、やっぱり苦手かなぁ。。。来週から、音楽スポットに出会える事を期待します!
Rock oN 担当 リュウジ
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
国立でコンガボンゴ (掲載日時:2008年11月7日)
中野ブロードウェイを後にして、これからどこへ行こうかと相談しながら駅へと向かう。そういえば前回の国立音大編で、国立駅から行くものだと思っていたら違ったことを思い出した。
![]()
国立は、いわゆる中央線沿線の他のエリアとは、なんとなく異なる雰囲気がある。改札近くには、下校時間なのだろう、いかにも付属小学校、といった制服の少年が並んで歩いている。駅からは、まっすぐな並木道が伸び、整然とした街並みが美しい。ふと脇を見ると、英会話学校の看板、その名もビバリーだ。なんだか、とってもハイソなところに来た気がする。
![]()
国立の並木道を歩くのは快適だ。車道も広いが歩道も広く、実に歩きやすい。ただ、この気持ち良さはそれだけではない気がする。なんだろうと思っていたら、両側の建物の高さが低いからだということに気がついた。どの建物も、並木を超えないくらいの高さに押さえられているので、空がとても広いのだ。
![]()
しばらく歩くと一橋大学が現われる。一橋大学は、その名の通り元々神田一ツ橋にあったのが、関東大震災を期にこの地に引っ越した。80年の歴史を持つキャンパスには、武蔵野の木々が生い茂り、レンガ造りの重厚な建物が並ぶ。降り始めた小雨の中、黄褐色のレンガと樹木の深緑が、美しくけぶっている。入り口付近には、来月早々に開かれる大学祭の看板が大学らしい活気を見せる。そういえば、ここの兼松講堂は、音響が良いのでも知られるホール。今年もいろいろなコンサートなどが予定されているようだ。
![]()
ちょうどお腹もすいてきたので、学食に入ってみた。やはり安くて量が多い。普通の量でもちょっと食べきれない感じだが、周りを見ると、男子学生が二品三品ととって、モリモリ食べている。
![]()
大学を後にして、駅へと戻ろうとしたら、途中、雨が激しくなってきた。どこかで雨宿りでもと思って横道に入る。リュウジくんが、あんなのがありますよ、と指差すビルの4階に、パーカッション・ショップ「コンガボンゴ」と看板が出ている。
![]()
コンガボンゴの店内には、ラテンやアフリカのパーカッションが一杯だ。サンバで使う4弦のミニギター、カバキーニョも並んでいる。ショップ・オリジナルの楽器も多く、なかでも目を引いたのが、リバーブボンゴ。ボンゴとカホンの中間のような木製パーカッションで、中にスプリングが仕込んである。叩くと、ビヨーンとなんとも“宇宙的な”音がする。
![]()
不思議スペースサウンド、リバーブボンゴ。マスターすれば「サンラー的宇宙に近づけるかも??(mp3) ![]()
![]()
いろいろと見ていると、ちょうど、オーナーのPOKI(ポーキー)氏が、犬の散歩から帰って来られた。氏は、DJ、パーカッショニスト、MCなど、様々な活動をされている才人。とても気さくな方で、いろいろな楽器の奏法を実演してみせてくれた。いきなりの訪問だったが、実に親切に応対していただき、感謝感激である。こういうことがあるから、ぶらぶら歩きは面白い。

![]()
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
偶然見つけたパーカッション専門店コンガボンゴさん。店内はパーカッションが所狭しと置かれています。僕ができるのは、せいぜいシェーカーを振るくらいなので、演奏を満喫できたとは言えませんが、大好きな方が訪れれば充実した時を過ごせるのは間違い無し。ぜひ、リバーブボンゴをお試し下さい。お店の方もとっても親切で、急な取材にも関わらずお世話になりました!
Rock oN 担当 リュウジ
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
阿佐ヶ谷で看板ウォッチング(掲載日時:2008年11月14日)
ハイソな国立の後は、ディープな高円寺へと思ったのだが、一つ手前の阿佐ヶ谷に寄り道してみたくなった。阿佐ヶ谷には、以前所要で訪れたことがあるが、その際はクルマで目的地に行って帰っただけ。それでも、何か惹かれるものがあったのだ。
![]()
全く土地勘がないまま、駅を降りる。どっちに行こうかと迷っていたら、リュウジくんが、こっちがロータリーって書いてありますから、北口が表ってことじゃないですか、と教えてくれる。なるほど確かに北口ロータリーと書いてあるが、反対側を見ても南口ロータリーと書いてある。まあ、これもきっかけだと想い、北口から出てみた。
![]()
ロータリーの右側は、広い中杉通り沿いにスーパーなどが並ぶ明るい街並み。逆に左側はなんだか心細いような路地通り。スターロードと書かれた電飾が小雨に滲み、おいでおいでをしているようで、足は自然にそちらを向いてしまう。
![]()
スターロードは、中央線とほぼ平行に伸びる小路で、小さな飲み屋や雑貨店が続いている。入り口近くには、由緒正しそうな喫茶店「プチ」の看板。確かここは太宰治が通った店だ。少し歩くと「ラジオ屋」と書かれた暖簾。こちらは、様々なマンガ家が訪れるので有名な店だ。名前だけは知っていたのだが、ここだったのかと思って看板を見ると、永島慎二の猫の絵があった。
![]()
これは、面白いところへ来たぞと思いながら、どんどん歩く。「よるのひるね」「あるぽらん」など、趣味主張のありそうな店が次々に現われる。どこかへ入ってみたいのだが、先への興味の方が強い。さらに奥へと、ずんずん進む。駅から遠くなるに従って、店はまばらになるが、それでもなんだか面白そうな雰囲気は続く。よくある古いスナックかと思ったら、扉には演劇のポスターが何枚も重ねて張ってあったりする。そういえば、詩人で劇作家、路地歩きの達人でもあった寺山修司が入院していたのは、阿佐ヶ谷の河北病院だった、などと連想が広がる。
![]()
数百メートルも歩いただろうか、さすがに店も無くなり、住宅地のようになってきたので、引き返すことにする。今度は、中央線の南側を歩いてみた。こちらは、少し新しい感じの町並みだが、やはり駅の辺りはなかなか雰囲気がある。いかにも駅裏といった感じの横丁の共同看板に、ブルースバーの名前が混ざっていたりするのが楽しい。
![]()
それにしても、この街は面白い看板が多い。店自体が個性的なこともあるのだろうが、それをまた看板がうまくあらわしている。イラストや書き文字の面白さは、まるで街角アートのようだ。それに、そここに張られているポスターのユニークさも加わって、なんだかちょっとした野外美術館を歩いている気分になる。


![]()

![]()
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
時間帯は、お店の開店前。夜の賑わいはこれからという感じでしたが、やがてディープな人種が集い出すのでしょう。それぞれのお店は、小さいながらも、”聞いたら凄いストーリー”が沢山埋まってそう。そんな想像をしながらの散歩でした。
Rock oN 担当 リュウジ
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
阿佐ヶ谷から高円寺へ(掲載日時:2008年11月21日)
阿佐ヶ谷駅へ戻ってきたので、今度こそ高円寺だ。高円寺は隣の駅、電車で行けばすぐなのだが、どうやらそちらの方向にも、あやしい商店街が伸びている様子。駅前の交番で聞いてみると、徒歩20分くらいらしい。雨も小降りになってきたので、歩いてみることにした。
![]()
ラーメン屋や飲み屋などと並んで、やはり何かサブカルチャーを感じさせる小さな店が続く。高田渡のポスターが張ってあったり、扉の向こうから『風をあつめて』が聞こえてきたり、小雨の中歩いていると、永島慎二のマンガの登場人物になった気分になる。なんとなく、ブルースやフォークといった文字が多い気がするのは、高円寺側だからだろうか。
![]()
「ゴジラや」の店内は、ブリキの飛行機や自動車、ソフト・ビニール製の怪獣などレトロな玩具であふれ、まるで巨大なおもちゃ箱だ。見ているとキリがないのだが、やはり見てしまう。リュウジくんも、懐かしい、これあったなあ、などとつぶやいている。レコード棚を繰ったら、三波春夫の東京五輪音頭と並んで、子門真人が“歌う”映画『スター・ウォーズ』のメインテーマがあった。
![]()
高円寺の駅が近づくにつれて、通りは一気に賑やかになる。音響系ショップの「円盤」インド雑貨屋の「仲屋むげん堂」など、おなじみの店が次々に現われる。駅の向こうには「次郎吉」があるし、ライブハウスも多い。ギター・ケースを背負った若者が、そこここにいる。音楽の街、高円寺だ。
![]()
駅前には、リュウジくんリクエストのインディーズCDショップ、サンレイン・レコーズ(Sanrain Records)がある。すっきりときれいな店内には、先日あったスティーブ・ライヒのコンサートの映像が流れていた。壁一面の棚には、ジャズロック系など、おもしろそうなCDが並び、殆ど全て試聴OKなのもうれしい。スタッフも親切だし、これはいいところを教えてもらった。
![]()
それにしても、中央線沿線は懐が深い。サブカルチャーや音楽というと、なんだか新しいものにばかりが価値があるように思いがちだし、実際ここからは、最新の文化も次々と発信されている。しかし一方で、戦前から続く文士文化、クラシック音楽や現代アートもしっかりと根付いている。最新最先端のサブカルチャーだけではなく、ジャズ、フォーク、ブルースなど60年代からの流れも脈々と受け継がれている。しかも、それらは表通りのお店のショーケースにあるだけでない。こんな所にこんなものが、といった形で、日常と混在しながら、しっかりと自分の場所を確保している。誰かが仕掛けてそうなったのではない、生活する人と結びついた文化の力強さが、ここにはある。

![]()
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
色んな個性を持つ小さなお店の数々は、雑多に混ざり、溢れながらも1つの高円寺カラーで統一され、強い磁場を放っており、虚弱な僕は、長居すると熱が出そうでした。濃いーです、高円寺。個人的にも、古い知り合いだったサンレイン・レコーズ店長と再会できたり、円盤屋で珍しい音源を物色できたりと収穫溢れる1日でした。
Rock oN 担当 リュウジ
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
高山博プロフィール:アレンジャー/コンポーザー。クラシックはもとより民族音楽からポップス、ロック、アニメ音楽まで幅広い知識と 経験を 持ち、CD、TV、劇伴、イベント等、幅広い分野で活躍中。コンピューターと シンセサイザーを使った音楽制作にもその最初期から取り組んでおり、作品のクオリティの高さには定評がある。Rock on CompanyでもKeyboardMagazine連動セミナーでおなじみ。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
【目次】
第五回 中央線ぶらぶら歩き
ヤマハ銀座スタジオにて行われた新製品発表会。先日のNAMM SHOW 2012にて発表されたYAMAHA MGシリーズ最新機種「MGP」ラインナップが一挙登場! 「アナログの操作子の裏でDSPによって制御される緻密で劣化 [...]
音が伝わる空気の動きを正確に再現することを目指す「タイムドメイン理論」に基づき開発された、ECLIPS TD シリーズ。極めて自然な広がりと再生特性を持った同シリーズからスタンダードモデルの最新型が発表されました。都内の [...]
表参道The Galleryにて世界で初めてお披露目となるSRHフラッグシップモデル1840 & 1440の2機種。SHURE JAPAN代表 岩崎顕悟氏の挨拶で始まったワールドプレミアには数多くのディーラーが [...]
「GENELEC」InterBee 2011 Report GENELECのブースでは代表取締役であり、工学名誉博士のILPO MARTIKAINEN氏との接触に成功!白く深い髭が一見怖そうでしたが実は非常にまじめで真摯 [...]
スタジオ・モニター・スピーカーVXTシリーズ、ROKITシリーズが人気のKRK社から、Sales DirectorのNILS KARSTEN氏、Asia Pacific Marketing担当のSean Humphrie [...]
日本のR&B、ヒップホップのプロダクションシーンをリードするプロデューサー、作家、エンジニアが多く所属するタイニーボイスプロダクションから、 MANABOONさんが登場。都内にあるスタジオにお邪魔し...
HIP HOPやR&BをメインとしたブラックミュージックのDJとして、UNIVERSAL MUSICからもMIX CDをリリースされ、全国規模で活躍されるDJ SWINGさんです。DJとしての活躍に加え、選び抜かれたハイエンド機...
プロデューサー、アレンジャー、トラックメイカー、コンポーザー、リミキサーとして多様な活躍をされているNaoki-Tさんです。J-POPシーンを震わす存在として、ご存知ケツメイシのプロデュースをスタートに...
2009年に開催された「Rock oN 楽曲コンテスト 2009」にて、見事最優秀賞を獲得されたnothing ever lastsさん。注目を集めるこのバンド、ボーカル、ギター、ベースの3人ユニットで、ボーカルはなんと...
映画作りにおけるサウンドエディット、音響効果とは何をする仕事なのか? これまでお話を聞ける機会がなかったので、大変興味深い取材となりました。また、「フォーリー」という聞き慣れない単語...
各メーカーから大型新製品情報の噂飛び交うNAMM 2011!今年でなんと三年連続レポーターを務めるスティービー竹本に、イギリス留学仕込みのNative Englishと新人ならではのフレッシュさを武器にしたマイケル長岡の二人がカリフォルニアへと飛び立ちます!...
2010/11/5〜7に開催される129th AES CONVENTION 2010を、今年もRock oNが現地からたくさんの写真、動画を交えて徹底レポート! 新HD I/O、HD NATIVEと矢継ぎ早に製品をリリースしているAvidもAESに再臨。SSLなどのコンソール/アウトボード...
2010/1/14〜17に開催された世界最大規模の楽器の祭典"Winter NAMM SHOW 2010"。McDSPの新プラグイン、Waves & YAMAHAのコラボ、Lexicon待望のプラグイン、Rolandの新製品ラッシュ、コンパクト1台にSHARC DSP1基のDAMAGE CONTROL...
2009/10/9〜12に開催されたAES CONVENTION 2009。発表された新製品の中でも注目なのは、V-Studioシリーズも本年の話題だったSONAR 8.5や、GRACE design初のチャンネル・ストリップm103。そのほかにも遂に完成したNUENDO SyncStation、LexiVerb...
2009/1/15〜18に開催されたWinter NAMM Show 2009。二年半の沈黙を破り登場したSteinberg Cubase 5、ベース音源の世界定番Trilogyの後継となるSpectrasonics Trilian、圧倒的な技術力と執念をみせつけるVienna Symphonic Library...
第125回AES 2008 CONVENTIONを現地時間10/3〜10/5にかけて、ロックオン・スタッフが現地サンフランシスコに渡り、ダイレクトレポート!発表された新製品の中でも注目なのは、やはりメジャーアップグレードとなるPro Tools 8の発表...