ジャングルと言えば私。ジャングルの帝王の名を欲しいままにしたジャングル林がクロックジェネレーターについてお話しようと思います。
何故私が今回クロックジェネレーターに付いて掘り下げていくのかというと、使用するジェネレーターによって変化する部分が違うという疑問を抱えていたからです。
試聴をしたお客様から「Antelope Isochrone OCXは音の重心が下がる」や「Tascam CG-1000はステレオイメージが広くなった」といった声を聞きます。しかしメーカーサイトに掲載されているクロックの品質を表すパラメーターは「許容周波数偏差」や「周波数精度」という言葉のみで、前述の製品であればOCXが0.02ppm、CG-1000が0.01ppmと桁違いに差があるというわけでもなさそうです。
本稿ではクロックジェネレーターによる音質の変化に的を絞って書いていこうと思います。
サンプルタイミングの揺らぎによる再現性
上記の図はサンプリングのタイミングが揺らいだ事による波形の再現性の悪化を可視化したものです。
左の図は等間隔なサンプリングを行った場合、右の図はサンプリングタイミングがバラバラな場合を強調して表しています。こういった状態では歪み成分が付加されてしまったり、量子化誤差の増加によるS/N比の悪化と百害あって一理ありません。
LRCLK
こちらはDACチップへのデジタルデータ伝送プロトコルの簡略図で、一般的なIC間デジタルオーディオ伝送はシリアル伝送となっています。
内容はデジタルオーディオのデータであるDATA、そのDATAの1ビットずつに対して読み取るタイミングを知らせるBCKと呼ばれるクロックと、LRの信号を振り分けるLRCLKと呼ばれるクロックの「1つのデータ+2種類のクロック」という構成となっています。
ここで重要なのがLRCLKで、これはシリアル伝送の為にDATA内にLRが一緒に伝送されている中でそれぞれのチャンネルに振り分ける役割を持っています。またこのクロック信号をタイミングとしてデータをコンバートしていくため、正確な定位の再現にも重要なファクターとなります。
※簡易図として片ch辺り8bitの図を作成しましたが、本来片ch辺り24bit分が伝送されます。深く知りたい方はDACチップデータシートに興味深い記述があります。
許容周波数偏差
さて、上記にあげた2つの事柄をまとめてみましょう。
・サンプリングタイミングによってS/N比の変化や、歪みの質によって音の質に影響を及ぼす
・LRCLKによって定位感の善し悪しが決まってくる
この2点に共通する事は1クロックずつの間が重要である、という事です。
ではここで「許容周波数偏差」についてお話を致します。
こちらの簡易図の通り、”出力しようとしているクロック周波数”と”出力しているクロック周波数の実効値”との差が周波数偏差となります。
例えば、48000Hzに対して0.01ppmのずれが有ったとすると、0.00048Hzのズレが生じるということになります。このズレが多いとピッチが変わってしまう、という事態になります。(最近の機材では防止回路によってクロックを受け付けません)
さて、お気づきの方もいらっしゃるかとは思いますが、周波数偏差は出力クロック周波数の実効値であり、赤い曲線のような”肩”の部分については表していません。この肩の部分が揺らぎの大小の判断に有用なのですが、残念ながら公表しているメーカーはごく一部です(C/N比での公開等)。
また、この周波数偏差はどのスパンでつまり、カタログスペックでの優越を判断するのは非常に難しく、「実際に聞いてみる」というのが必要になってくるのです。
それでは実際に聞いて頂こうと思います。
Pro tools HDXシステムのHD I/Oから出力したデータをサミングを通してDA-3000マスターレコーダーで録音する方法で、HD I/O、DA-3000のクロックソースを内部クロックの場合、TASCAM CG-1000の場合、Antelope Trinityの場合とそれぞれ収録したデータです。
Rock oN Company渋谷店では主要機種を取り揃えておりますので、試聴はもちろんお客様のご要望に沿ったご提案が可能です。是非、Rock oN店頭にて”クロックの違い”を体感して下さい!
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