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17
Mar.2015
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Rock oN Staff Blog!Outboardの深層世界! : Part.4 DAC編

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皆さんこんにちは!休日は某電子設計の基本と応用がわかるサイトとパーツメーカーのホワイトペーパーを読み漁るアキバ系男子予備軍のジャングル林です。今回はデジタルレコーディングの中でも音質や特性を左右するA/D,D/Aコンバーターについて書いてみようと思います。

先ず、A/D,D/Aコンバーターが何処に使われているのか整理してみましょう。皆さんご存知かとは思いますがA/D,D/AコンバーターのAはアナログ、Dはデジタルの頭文字をとっており、アナログ(連続した信号)をデジタル(離散的な信号)に変換する機能のことです。

具体的に搭載される機器を挙げると、アウトボードリバーブ、デジタルオシレータシンセサイザ、マルチエフェクタ、最近ではDSP搭載のモニタースピーカーなんてのもありますし、音響以外でもデジカメ、ディスプレイ、テスター等の計測機器、センシング関係では必ずと言ってよいほど搭載されているものです。

特に私たちの身近にあるもので言えばオーディオインターフェイスが挙げられるでしょう。それの良し悪しで録音・プレイバックの品質が左右されることは現場や店頭で経験されている方も多いことかと思います。折角なので少しオーディオインターフェイスを少し掘り下げて説明いたしましょう。

オーディオインターフェイスの中身とは

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こちらがオーディオインターフェイスをなんちゃってダイアグラムとして書き起こしたものです。下部アナログ信号からデジタル信号へ(茶)、そのデジタル信号をノイズに耐える形に変えたり、ルーティング制御や音量調節・エフェクト処理等を担当するセクションへ送られ(緑)、USBやThunderbolt等でPC・MACへと送られていきます。

※Pro tools HDシステムのようにPCI・Thunderboltインターフェイス部分とI/O部分が分かれていたり、FPGAの普及により構成が図とは異なっている製品も多く存在しますのでご注意ください。

さて、音質の変化にフォーカスを合わせてみましょう。図の中・上段にいたっては音質に対して実用上影響はないと言って良いでしょう。また、USBやS/PDIF、AES/EBU(信号自体はS/PDIFと同様のものです)の接続方法によって音が変わるという話題もありますが、受け側の装置が安価な民生機器や設計が不適切でない限りは後述の「ジッターアイソレーション」により変化が出ない様な工夫がされています。

普段聞いている音はDSD?

最近オーディオ業界を中心に人気が再燃しているDSD(DSD・PDMについてはhttp://www.miroc.co.jp/archives/79738を参照下さい)。ここで一つ夢の壊すような話をしますが現代のA/D,D/Aコンバーターでは殆どの場合PDMからPCMに(A/D)、又はPCMからPDMへ(D/A)とワンクッションおいて変換しています(このような方式をデルタシグマ方式又はシグマデルタ方式と呼びます、カタログ上ではオーバーサンプリングなどと書かれているものがそれです。)。

業務用オーディオインターフェイスや民生オーディオ機器で聴いている音の殆どがPDM化されたPCMつまりDSDに変換されたデータを聴いているということになります。デジタルオーディオ黎明期にはR-2Rラダーやカレントセグメント方式のようなマルチビット方式のコンバーターが開発・実用化されましたが、近年の技術向上によって高周波で動作させるデルタシグマ方式のようなワンビット方式のコンバーターが主流となっています。

マルチビット方式が淘汰された理由は精度を求めると製造コストが高くついてしまうからです。16bit(65,536段階)を正確に組み上げるには正確無比な抵抗が必要になりますが、何せ抵抗といえばオーディオ用抵抗でも±1%程度の誤差がでてしまうバラツキのある素子です。これを16bitやそれ以上のbit数に適応するべく製造しようとなるとレーザートリミングといった特殊な製造工程が必要になってきます。しかし、ワンビット方式であれば正確な抵抗を必要とせず、ESS社や旭化成エレクトロニクス社等でプロダクトされている32bit対応DACといった従来マルチビット方式の技術だけでは成し遂げられないような製品を作り上げることができるのです。

それでは実際のDACチップベンダーより発行されているデータシートに掲載されているブロックダイアグラムを見てみましょう。

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「Cirrus Logic社ホームページ”WM8742 Product Datasheet”より引用:http://www.cirrus.com/jp/products/wm8742.html

こちらはWM8742と呼ばれるハイエンドD/AコンバートICです。左からPCMorDSD入力となっており、PCMデータはデジタルボリュームを通りオーバーサンプリング/デジタルフィルタを通ります。その後にシグマデルタモジュレーターに送りPDM化され、DA部(LPF)にてアナログ信号化されます。また、このチップはDSD入力をダイレクトにコンバートする機能があるので、下の経路にそってDSDデータに手を加えることなくアナログ信号へ変換することが出来ます。DSD形式再生のアドバンテージはこのDSDダイレクト機能にあると言えます。

ジッターアイソレーション

ジッターとはクロック信号の揺らぎのことです(詳しくは過去の私の記事をご覧下さいhttp://www.miroc.co.jp/archives/54461)。前のブログ記事にも書かせていただいた通り、正確なA/D,D/Aコンバートには正確なクロック信号が欠かせません。かと言って接続方式や受信元の機器の品質によって音質が変わってしまっては大変に不便です。デジタルPLL(Phase Lock Loop)等の補正技術でゆらぎを取り除いているのが現状です。デジタルデータのゆらぎに関してはこちらの記事などもご参考ください(http://www.synthax.jp/steadyclock.html)。

そこで、ジッターにより音質に影響の出るD/Aコンバーターに直接良質なクロックを供給することで解決してしまおうという機能を持っています。即ち、それ以前の段階のジッターを断絶することができるので「ジッターアイソレーション」などといわれています。上記のブロックダイアグラムでは下部中央からDSDダイレクトとPCMのオーバーサンプリングの基準としてクロックを入力できるようになっています。

さて、クロックジッターについてお話をしたところで、Rock oN PROの記事(http://pro.miroc.co.jp/2013/04/05/easymasterclock/)でも紹介されているAntelope社の製品をご紹介しましょう。それは「Orion 32」です。これはPro toolsの同時録音数上限である32chのA/D,D/Aを搭載しており、大規模なプロジェクトに対応することが出来ます。また、Antelope社の専門分野でもあるクロックジェネレーターが正確なコンバートを猛烈サポートしており、A/D,D/Aコンバーターとクロックジェネレーターがワンパッケージになったようなお得な製品です!



¥ 0 (本体価格:¥ 0)

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さて、A/D,D/Aコンバーター編いかがでしたでしょうか?こんなに語っておいて難ですが、CirrusLogic社のハイエンドD/AコンバーターICがiPod Touchに搭載されていた世代がありました。ポータブルDAP市場を見る限り音質に対して格別のスポットも当たっていなかったように思います。クロックの精度や電源電圧、消費電力や実装面積の問題、もっといえばヘッドフォン・ラインアンプといった部分が如何に重要か、という事で単にチップセットの銘柄やブランドで判断するのは早計かとは思います。Rock oN Company店頭ではオーディオインターフェイスやA/D,D/Aの視聴が可能です、気になる機種があればご連絡・ご相談くださいませ!

今回私の伝えたかった事の一つはデジタル機材の正しい構成・運用です。周囲の情報に踊らされず、正確な情報を元に高い品質の作業環境を作り上げることが重要ですが、そのお手伝いができればこんなに嬉しいことはありません。また別記事にてチップベンダーのプロダクトを使用しないA/D,D/Aのお話をさせて頂こうと思いますので掲載の折には是非ご覧ください。


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    記事内に掲載されている価格は 2015年3月17日 時点での価格となります。

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