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自宅の作業部屋に KH 80 DSP と KH 750 DSP を導入して以来待ちわびていた MA 1 が遂にリリースされました!
まずはスピーカー本体について少しお話ししたいと思います。
私も以前は自宅での作業はミックスの仕込みや編集作業など最小限に留めていましたが、複数のプロジェクトを並行して進めていくうえで自宅でも精度の高いモニター環境の必要性が高まり、色々探している時に KH 80 DSP と KH 750 DSP に出会いました。
以前からスタジオで愛用している他社のスピーカーは家で鳴らすには大き過ぎたのですが、KH8 0 DSP と KH 750 DSP は自宅に導入するのにちょうど良いサイズだったのですぐに試してみました。試す前はメインスピーカーとサブウーファーのサイズが違い過ぎるので両者の音の繋がりを懸念していたのですが、試してみてビックリ、驚くほど自然な繋がりで下から上まで全帯域において見通しが良いです。
また、KH 750 DSP が密閉型であるというのも大きなポイントです。以前スタジオにサブウーファーを導入するにあたり、色々なメーカーのサブウーファーを聴き比べた事があるのですが、どれも低域の量感は問題ないものの「音の止まり方」という観点でサブウーファーを導入するなら密閉型一択だなという結論に至りました。もちろんバスレフ型ならではの気持ち良さもあるのですが、ミックスでベースの最低域やキックの長さを調整する際には密閉型のようにピタっと音が止まってくれるサブウーファーの方が作業しやすいのです。
矛盾した表現ですが KH 80 DSP と KH 750 DSP の組み合わせは「小さなラージモニター」だと思っています。字面だけでは??という感じですが、音を聴けばきっと分かってもらえると思います。
そして MA 1。
まず補正のプロセスですが、スピーカーの前に専用マイクを立て、スウィープ音を収録するだけのとてもシンプルな行程です。何度か場所を変えて収録する必要がありますがマイクの移動以外はアプリが自動的にやってくれますので、この様なシステムが初めての方でも問題なく行える筈です。
同じ様な物でDAW上でプラグインとしてインサートするタイプの補正システムもありますが、これだと補正EQによってレベルが変わってしまうので、外部のVUメーター、ラウドネスメーターを使っている方にとっては使いづらいですし、ヘッドフォンとの行き来の際の煩わしさもあります。
その点、MA1は一度設定すればその設定をスピーカー本体に保存出来るので何のストレスもなく導入出来ます。そして測定、補正の精度も高く、ルームチューニングで追い込みきれていなかった部分を見事に解消してくれました。
私の部屋も当初、200~300Hz辺りにピーク、80~100Hz辺りにディップがあり、吸音パネル、ディフューザー、定在波パネルなどで対策はしておりましたが、それでも解消しきれていなかった部分を MA 1 システムが補完してくれ、より精度の高いモニター環境を構築出来ました。
日本の一般的なマンションや自宅の1室では上記の様な音響特性になっている可能性が高いのですが、ルームチューニングと MA 1 の併用でかなり快適なモニター環境出来ると思います。精度の高いモニター環境であれば小音量でのミックス、マスタリングが可能になるので、作品の仕上がり、騒音問題どちらの面でもメリットが大きいのではないでしょうか。
補正自体は測定結果に応じて自動的に適応されますが、その後で手動でパラメトリックEQを入れる事も出来るので、必要に応じてよりフレキシブルに自分好みの補正を施す事も出来ます。また、仮にメインのステレオスピーカーがDSPを搭載していない KH 120 や KH 310 などのモデルでも KH 750 DSP を経由して補正システムを利用できる点も素晴らしいですね。要望があるとすれば測定結果をアプリ上で保存、呼び出し、微調整出来るようにしてもらえるとより使いやすいと思いました。この辺はアプリのアップデートに期待したいと思います。
総評としては、KH 80 DSP、KH 750 DSP と MA 1 のセットは、自宅などあまり大きな音が出せない、または音響的に理想的ではない部屋でも精度の高いモニター環境を構築したい方、小音量でも低域から高域までしっかりモニターしたい方にとってはベストな選択の一つと言えます。
モニタリング新時代の幕開け NEUMANN MA 1
プロフェッショナルなモニタリングクオリティを実現する為の専用ツール
ノイマンのオートマチック・モニター・アライメントMA 1は、ホームスタジオからプロのコントロールルームまで、最高の音質を保証します。1本ずつ校正された測定用マイクを使用して、音響環境をガイド付きのプロセスで分析します。世界有数の音響処理研究機関であるフラウンホーファーIISと共同で開発された高度な音響調整アルゴリズムは、正確で信頼性の高いモニタリングのための最適な振幅と位相の補正を保証します。
特徴
どこでも信頼性の高いモニタリング
ノイマンのオートマティック・アライメントは、KH 750 DSPサブウーファーのアナログ出力に接続されたKH 80 DSPモニターや、DSPベースではないKH-Lineモニターのための統合ソリューションです。プラグインや特別なオーディオドライバーは必要ありません。アライメント・データは、DSPを搭載したモニター自体に保存され処理されます。独自の利点として、ソフトウェアは振幅応答を最適化するだけでなく、位相も最適化します。これにより、トーナリティとインパルスの再生において最高の精度を実現しています。
動作原理
最初のステップでは、ガイド付きのプロセスでリスニング環境の音響データを収集します。特別な音響知識は必要ありません。お手持ちのノイマンモニターをオーディオ・インターフェースやモニターコントローラーの出力に接続するだけです。さらに、DSPベースのKHモニタースピーカーをコンピュータのイーサネットポートに接続する必要があります。複数接続する場合、標準的なイーサネットスイッチをご準備下さい。
次に、測定用マイクをマイク入力に接続します。このマイクは、このソフトウェアのために特別に開発されたもので、個別に校正されています。ソフトウェアは測定プロセスを案内し、測定されたデータから部屋の音響特性を把握します。ソフトウェアによって計算された部屋固有の目標特性に従って、個々の補正パラメータが生成されます。このプロセスには、スタジオコントロールルームでのモニタリングシステムの校正におけるノイマンの数十年の経験が組み込まれています。もちろん、ユーザーのニーズに合わせてターゲットカーブを変更することも可能です。
サブウーファーを使用している場合は、アライメントプロセスにより低域が最適な状態に補正されます。結果として得られたすべての補正パラメータは、DSPを搭載したモニターに保存され処理されるため、プラグインやドライバーの問題を心配する必要はなく、アライメント処理完了後はイーサネット接続は不要です。
サブウーファーKH 750 DSPを使用することで、アナログKHモニタースピーカーのステレオセットも、モニター自動調整ソフトウェアを使用して使用することができます。KH 750 DSP は、その出力に接続された 2 台のアナログスピーカを含むシステム全体のアライメントを行うのに十分な処理能力を持っています。さらに、KH 120、KH 310、KH 420モニタースピーカーは、内蔵クロスオーバーフィルターの位相リニアライズの恩恵を受けることができます。その結果、明瞭度が向上し、ドライな低音、リバーブや音響空間の時間的に正確で正確な描写が可能になりました。
今後について
MA 1 オートマチック・モニター・アライメントは、モニタリングの新時代の幕開けです。ステレオのセットアップで優れた音響効果を発揮する現行バージョンをはじめ、ソフトウェアの機能はアップデートにより段階的に拡張されていきます。
必要なハードウェア
以下のスピーカーとサブウーファーはネットワークに対応しており、ソフトウェアで直接制御することができます。
以下のモニタースピーカーはネットワークに対応していないため、KH 750 DSPを経由して接続する必要があります。
⬅️Rittor Music Sound & Recording Magazine 2021年3月号 Rock on Monthly Recommend記事で Neumann MA 1 が紹介されています。
記事内に掲載されている価格は 2021年3月18日 時点での価格となります。
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