グレゴリさんが考える、レコーディング時におけるマイクプリアンプの重要性について教えてください。
Gregory Germain氏 (以下 グレゴリ、敬称略):
僕にとってレコーディングにおける最も重要なツールはマイクです。まずは正しいマイク、そして適切なマイクの位置はとても大事です。ただ、マイクの音量を増幅するにはどうしてもプリアンプが必要です。そこの組み合わせがかなり重要で、このマイクはこのプリアンプと相性がいいとか、このジャンルやこの楽器ならこのプリアンプがいいなど。
ある意味レコーディングが絵描きであるとするなら、マイクが筆の役割であって、プリアンプの役割は色です。まれに全く相性が合わないプリアンプとマイクの組み合わせがあるとしても、魔法のようにマッチングする時もあり、エンジニアの仕事はそれを見つけることです。それぞれのレコーディング状況によって、頭の中に幾つかのコンビネーションを作る事がとても重要だと思いますので、それぞれのプリアンプの特徴を理解した上でマイクを選ぶことが重要ですね。
グレゴリさんがマイクプリアンプに求める条件を教えて下さい。
グレゴリ:まずはやはり、どのマイクと相性がいいのか判断します。その他はどの目的でそれを録音するのかが条件です。とてもクリーンな感じの音が欲しいなら、どちらかというとプリアンプの音を聞くよりマイクの音を聞きたいから癖のないプリアンプを選びます。
逆にプリアンプに色付けを求めて、マイクにはないプラスアルファの何かを求めるならそっち系のプリアンプを選びます。例えば飽和感を求めるなら NeumannのマイクからNeveの1073か1066へ。とても透明感のある生楽器を録音したいならコンデンサーマイクとクリーンなプリアンプ。歌でボディーがちょっと足りない女性か男性ボーカルなら、マイクで拾えないミッドレンジをプリアンプでカバーしたりします。
普段はどんなマイクプリアンプ製品をお使いですか? それらの使用用途、選択理由を教えてください。
グレゴリ:
Clean系プリアンプ
Pueblo Audio、Millenia、Sym Proceed、Grace Design
生楽器の録音で映画のサントラ、アコースティック系の音楽、ジャズまたはドラムでトランジェントをしっかり守りたい時
Color系プリアンプ
Neve 1073、1066、1081、API全般、Rupert Neve (Portico)
こちらはキャラクターを出したい時、ドラム、シンセ、パンチ、ボーカルの場合は太さなど
Ribbon系プリアンプ
AEA RPQ2
リボンマイクのインピーダンスがかなりトリッキーなので、リボン専用のプリアンプとして使いますが、ダイナミックでも合う時があります
NEUMANN V 402
Neumann V 402をお使いいただいた印象をお聞かせください。
グレゴリ:第一印象は太い感じですね。こんな太くていいのか?ミッドレンジがしっかりしていてとてもレンジが広い。またゲインはかなり大きくて、おそらくどんなマイクのインピーダンスでも対応できると思います。Neumannマイクとの組み合わせは、今まで聞いたプリアンプの中で一番良かったです。ただ、先ほどのリストにあるColor系プリアンプと違ってクリーンな印象もありますので、ちょうどその間にいる感じです。真空管のプリアンプではないですが、真空管を通ったような感じがして、不思議な雰囲気ですがとても良かったです。ヘッドホンアンプがプリアンプに付いてるのがかなり珍しくて、最初はうまく理解できなかったんですが、確かにそのプリアンプの後、コンプやインサートで入っているEQを聞きたくない場合、単純にプリアンプから出ているマイクの音だけを聞けるクリティカルリスニングが良かったです。
Neumann V 402はどのような用途(レコーディングソース)に効果を発揮しそうでしょうか?
グレゴリ:ミッドレンジがすごく見えやすくなって、それぞれの楽器の最も重要な音色の部分がしっかり聞こえているような感じがします。マイキングがとてもしやすくなりますし、どのマイクがどのソースに合っているのかがすぐわかります。
Neumann V 402と相性がいいマイクはありますか?
グレゴリ:
Neumann U 47 Tube (ビンテージ)
Neumann M 49、またはそのクローン (Fleaなど)
Chandler REDD
AKG C12
リボンマイクとは全体的に相性が良いです
Neumann V 402をどんなユーザーにお勧めしますか?
グレゴリ:ステレオでどんなシチュエーション(ピアノ、アンサンブル系の楽器)でも使えるプリアンプですが、色々なプリアンプを使ったことがあって、クリーンと癖のあるプリアンプの中間を探してる人や、ボーカルレコーディングでビンテージのNeumannマイクをよく使う人にお勧めです。
記事内に掲載されている価格は 2021年5月31日 時点での価格となります。
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