プリアンプを選ぶ際に大切なことは何ですか?
森元浩二氏(以下敬称略):マイクロフォンのダイアフラムによる微弱な発電電気を最初に何百倍も増幅するのがプリアンプですから、そこが良くないと最後まで取り戻すことが出来ないので間違いは許されません。例えとしては安いカメラで撮った写真はその後どんな処理をしても良くはならないのと同じです。プリアンプは音源により向き不向きもあるので、色々な機種の音色を記憶しておき、後悔のないチョイスをすることが大切です。
プリアンプとマイクの組み合わせにおいて、大切なことはありますか?
森元:アンプにより得意なゲイン範囲があります。またインピーダンスの相性でも音色が変わります。リボンマイクはゲインが小さいので、高ゲインが得意なプリアンプ。U 87 Aiなど最近のマイクはゲインが大きいので、低ゲインでも硬い音色にならないものを組み合わせます。
普段よく使われるプリアンプは何がありますか? また、その製品をチョイスされた理由をお聞かせください。
森元:JH M-2、AMEK 9098EQ、NEVE 1081、1073、FOCUSRITE ISA 115。
JH M-2 ➡️ 小音量から大音量まで周波数特性の変化の少ないリニアな音
AMEK 9098EQ、FOCUSRITE ISA 115 ➡️ 歪の少ない密度の濃いクリアな音
NEVE 1081 ➡️ ABクラスアンプの歪み感は少し多いが存在感のある音
NEVE 1073 ➡️ Aクラスアンプの柔らかい太い音
マイクプリ NEUMANN V 402 の見た目、デザイン、操作端子などについて、ファーストインプレッションをおきかせください。
森元:ズシッと重い筐体で、各ツマミの操作感も適度な重みもあり信頼感があります。ボタン類は少し奥まったボタンのスイッチで、間違って操作することがありません。
サウンドのファーストインプレッションをおきかせください。
森元:とにかくトランジェントの速い音です。速い音というと、細い音を想像してしまいますが、V 402は速いのにローエンドまで詰まった密度の濃い、なおかつクリーンな音色です。またマイクから距離が離れた音色でも輪郭がボケることなく、耳で聞いている音像に近い音が録れます。
NEUMANN V 402
NEUMANN V 402 はどのような用途に最適だと思いますか?
森元:空間を捉えるのが得意なので、ストリングスのルームマイクのプリアンプとして。DPA 4006との組み合わせで使いましたが、これまでで一番いい音が録れました。またトランジェントが速いので、子音が重要な日本語の歌にも合っています。太い音を録りたいと遅めのプリアンプを選択する人も多いと思いますが、太さは後処理で歪を足すなどで補えますが、トランジェントを後処理で足すのは難しいです。後処理の融通が効く密度の濃いクリーンな音を録れるV 402は何に使ってもいいと思います。
どのようなシーンで使いたいと思いますか?
森元:ストリングスのルームマイクには絶対に使いたいです。これまで、ストリングスのルームマイクは何種類も立て、それを混ぜて音像を作っていましたが、V 402で録音したステレオワンポイントはそれだけで必要なものがすべて録られていて、余計なことをしなくても、ミックスの中で存在感のあるストリングスが録れました。空間の距離感の表現力があるので、すべてのルームマイクにV 402を使いたいです。
そのほかV 402について、なにかあればご自由にお聞かせください。
森元:ノイマンというと、アナログレコードのカッティングマシーンやビンテージの真空管マイクU 47、U 67が有名なので、古いアナログ感のある温かい音を想像しましたが、全く違う最新のスピード感のある音色でした。どの帯域もしっかりと密度があるので、何に使ってもいい結果を残す万能なプリアンプだと思います。
記事内に掲載されている価格は 2021年2月19日 時点での価格となります。
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