みなさま、ジメジメ&あっつ〜い日々が続きますね。
と、思いきやちょうど梅雨が明けたそうです。梅雨の時期は機材の修理のご相談が一挙に増える気がしています。はたして湿度や外気温の変化と、スタジオ機材の故障の相関関係はどこまであるのでしょうか?
……図らずも不穏な導入になってしまいましたがご安心(?)ください、今回は明るいレビュー記事です。
今回取り上げるのはこちらの3機種!!
いずれも定番中の定番と言えるほど逸品。
個人、スタジオ問わず導入も多く、確かな実力が評価されている機種です。
それぞれスペックは下記の通り。なるべく表記は分かりやすく揃えていますが、一部原文ママになっています。
ドライバサイズ
搭載されているスピーカーユニットのサイズです。特にウーファーユニットは大きいほど周波数特性が広くなる傾向があります。
今回取り上げたスピーカーはいずれも2ウェイ構造と呼ばれるもので、高音域の再生を担当するツイーターユニット、中音域、低音域以下の音域の再生を担当するウーファーユニットの二つが搭載されています。
周波数特性
スピーカーの周波数特性の広さを示しています。最低再生音域〜最高再生音域といった表記になり、広いほど広大な再生音域を備えている事になります。
横のdB表記は、その範囲内の最大の誤差ないし、上下どこまでの音量を「再生されていると捉えている」かという数字になります。
最大音圧レベル
スピーカーが音割れせずに再生してくれる音量をSPL(Sound Pressure Level=音圧レベルと訳されます)で表しています。
平均的な音量なのか?瞬間的な音量なのか?でも数字が大きく変わってきたり、測定条件によっても大きく変わるので、その辺りを記載してくれているメーカーも多いですね。
この数字が大きければ大きいほど、大きい音量で鳴らしても音割れしにくい、飛びにくい、という事になりますが、ホームスタジオで使うのであればまずどれでも問題にはなりません。
ツイーター / ウーファーアンプ最大出力
ツイーターユニット、ウーファーユニットそれぞれに内部接続されているパワーアンプの出力の大きさを表します。大きければ大きいほどスピーカーユニットを駆動する力が強い!という事。
クロスオーバー周波数
ツイーターユニットとウーファーユニットの再生音域がどこで区切られているかを表しています。実際には表記の数字でバッサリ切り替わるのではなく、ある程度ゆるやかなハイパスフィルターとローパスフィルターで制御している事が多いです。スペック的な良し悪しはありません。
入力端子
そのまま、音声ケーブルの接続方法になります。基本的にはXLR端子が多いですね!
電源電圧
動作させる為に必要な電源の電圧を表しています。いずれの機種も日本のコンセントに来ている100Vで問題なく動作します。
エンクロージャー素材
スピーカーを収めているキャビネット本体部分の素材です。ユニットや内部回路等だけでなく意外にもこの素材によっても色濃くキャラクターが変わってきます。
そもそも、スピーカーを選ぶポイントって?
「スピーカーを選ぶといっても何を気にしたらいいのか分からない…」そんな方は多いと思います。
周波数特性?最大音圧?ダンピングファクターって何? 同軸/2-way/フルレンジ? 入出力端子、バスレフ?密閉?などなど、モニタースピーカーを構成する要素は数えきれないほどありますが、どういった要素に着目してスピーカーをチェックしていくのがおすすめなのか?二人の視点はこうでした!
クーパー天野
まずはやっぱりお部屋の広さに合ったサイズであること。次にスピーカーの設置位置と視聴距離の工夫です!
テレビ等に置き換えてイメージすると分かりやすいかもしれません。1m前に50インチのディスプレイがあったら映像が見づらいですよね? ちゃんとお部屋の中のベストな位置を探して設置すると、一気に聴き取りやすくなります。何はともあれまずはそこからだと思います。
Vツイン多田
自分の環境でどのくらいの音量が必要か?は非常に重要です。特に今回の様な5インチ以下の小型スピーカーではバスレフ容量に低域が依存しがちですので、メーカーが想定した範囲の音量に近くなければアンバランスに聞こえてしまいます。
ホームユースではスペックや特性だけにとらわれず、見た目や音の好みも大切だと思います。スピーカーの前に何時間でも座っていられる様な、座るのが楽しみになる様な空間を作るには自分がリラックスできたり、時に集中できる様な空間でなければなりません。どっちも良くて決めきれないスピーカーが2種類あったなら、どっちのスピーカーが家にあったらテンションが上がるか?で決めちゃって良いんです!
Focal / SHAPE40
どんな特徴?
2017年、それまでのFocal 主力ラインナップだったCMS シリーズを置き換える形で発表されたSHAPE シリーズ。 分解能の高さとナチュラルなキャラクター、自宅環境にマッチするキャラクターとデザイン、それらを備えつつ手に入れやすい価格帯での登場によりモニタースピーカー界の勢力図を一気に塗り替えたと言っても過言ではありません。
実は導入に絶好のチャンス!
というのも、メディア・インテグレーション 35THを記念した、記念モデルがリリースされました。
本体のスペックには変更が無いものの、35TH特別ステッカーが付属する他、販売価格がSHAPEシリーズ発売開始の2017年当時と同価格になりました!
円安、輸送コスト、材料費の上昇等、特に2020年以降はあらゆるメーカーの値上げ幅が大きく、中には倍近くの価格設定になっている商品もあります。
そんな中、このお値段はもはや奇跡。数量限定ですのでお早めにご検討ください。
今回比較する3機種の中ではDSPを搭載していない唯一のスピーカーです。内蔵EQはあれどこれもアナログですので、内部AD/DAが絡まない真にアナログなスピーカーと言えるでしょう。
スピーカーのトップに天然素材を使用した、ヘッド側がラウンドしているデザインはモニタースピーカーにありがちな「音響設備感」が全く無く、創作意欲を駆り立てます。
リバースドームツイーターはスイートスポットの広さとクリアさを両立しており、
サイドのパッシブ・ラジエーターによって低い音域までの綺麗な定位の棲み分けを獲得しています。
亜麻繊維のサンドイッチ・コーンは、繊細で自然なキャラクターを持ちつつも、ツイーター、パッシブラジエーターのキャラクターを非常に上手く繋げています。
総合的にはモニタースピーカーとしてのキレの良さは保ったまま、限界まで「分析的な冷たさ」を排除したチューニング。
Focal はパーツ一つから自社設計、自社生産を行う、スピーカー界のビッグ・カンパニー。そんなメーカーの高度なエンジニアリングを比較的ローコストで堪能出来るスピーカーです。
どんな人にオススメ?
クーパー天野
まずは見た目がビビッと来た方!そのフィーリングを決して裏切らない音が鳴ります。ナチュラルで聴き疲れしないキャラクターは長時間デスクに向かう作家さんに特にオススメ。
音響設備感が全く無い、と上述しましたが、インテリアに拘った創作空間には本当に映えます。上述した数々の要素を盛り込みながらも、ルックスは非常に穏やかでまとまりがあり、Focal社のプロダクト・デザインの底力が窺えます。
一聴すると高音域がおとなしいキャラ?という印象を抱きがちですが、周波数特性を見ると35KHzまでズバッと伸びています!フラットでありつつも破綻しないこの感覚に慣れると、他社スピーカーの音では耳に刺さって聴こえる時があります。実際この出音に合わせてEQやコンプを掛けても分かりやすい手応えが帰ってきます。
また、スイートスポットが広めなのもありがたいポイントです。
机に奥行きがあまり無く、スピーカーとの距離が取れない環境の方にはこのスピーカーが見事にマッチする可能性高し!
俺ならこう使う!!
Vツイン多田
サイドにパッシブラジエーターがあり、デジタルの測定オプションや補正も無い機種なので設置の難易度はやや高いです。とは言うものの、現代が便利になっただけで、昔のパワードスピーカーはパッシブラジエーター構造を除いてはどれもSHAPEと同じ構成でした。
スピーカーの高さや位置、付属のスパイクによる角度など、どれを変えてもサウンドに変化が起こり、それはソフトウェアの判断ではなく自身の手による変化になります。
演出の無い素直なキャラクターは、言わば4気筒のNA車。色々なセットアップを試す事で耳や調整の技術が培われますし、セッティングに対して素直に反応してくれるのは自社設計である各パーツの品質やビルドクオリティが成せる技。使い手がSHAPEにそぐわない無茶を要求すると、SHAPEはできない事はできない!とハッキリ音で返して来るのも好感度が高いです。
SHAPEとの付き合いが長くなり、そろそろ次のスピーカーが欲しいなぁとなった時、あなたはもうスピーカーのいろはを会得し、求めているサウンドも決まっている事でしょう。
…えっ?そんな時間無い?スピーカー自体に集中するのではなく音に集中したい??
そんな貴方には定番音波測定ソフトのSonarworksのReference IDをどうぞ!35TH記念モデルならどっちもゲットしても通常のSHAPEよりお得にゲットできちゃいます!
Neumann / KH80DSP
どんな特徴?
あの!マイクで!有名な!ノイマンが!スピーカーを!!!
・・・マイクで有名なメーカーということは、スピーカーの製造ノウハウは他社より少ないんじゃないの?それって良いスピーカーを作れるの?
ご心配には及びません。ドイツが誇る老舗スーパースピーカーメーカー”Klein und Hummel”がその母体となっています。なのでKHという型番なんですね。
聞いた事ないメーカーだなぁ、と思ったVツイン多田よりも若い(と思われる)方達は、Klein & HummelのO300やO410というモデルを調べてみてください。実は非常に歴史があり、そしてノウハウもちゃんと詰まっているスピーカーなんです。
余談ですが、Neumann / MT48オーディオインターフェースも元になったモデルがございます。そのブランドはプロオーディオハードウェアを製造する”Merging Technologies”。頭文字を読むと”MT”になりますね。
KH80DSPは3機種の中で唯一の樹脂製エンクロージャーです。利点としてはまず軽く作られており、成型の工程上個体差がほとんど生まれない、と言うことが挙げられます。ジメッとした日本の気候にも左右されない樹脂製ボディは、高級感こそ劣れど、とても有り難い構造なのです。
また、同じ特性のスピーカーが沢山必要で、時には高い所にも安全に設置しなくてはならないシチュエーション…つまりサラウンドの需要がある時。軽量なNeumannスピーカーは空間オーディオのシステムにぴったりですね。豊富なマウントアクセサリーも用意されているので、ホームオーディオでお家にサラウンド環境を構築する時にもオススメです。
楕円形のウェーブガイドは他機種と比べてかなり広く取られており、定位感を持たせつつも空間が見やすいキャラクターになっています。サウンドは同軸やMTM構造のスピーカーとは真逆のアプローチで、2 Mixのチェックや生楽器のアンサンブルチェックなど、全体を見渡す用途に向いています。出来上がった曲を楽しむリスニング用途にも向いているでしょう。
その名の通りDSPを搭載していますので、別売りの測定マイクMA1との連携でお部屋に合わせて音質補正もかけられます!
どんな人にオススメ?
Vツイン多田
防音室や賃貸など、限られたスペースで良いサウンドを出したい方にオススメします!また拡張性に優れているので、まずはスピーカーだけを購入して次はMA1で音場測定、その後さらに推奨サブウーファーのKH750を導入し再生レンジを拡張、、予算が出来て引越しした後も買い替える必要はありません!のこり9個のKH80DSPを集めたなら、7.1.4chのDolby Atmosまでも網羅できちゃう夢のシステムが!その第一歩となるスピーカーです!
俺ならこう使う!!
クーパー天野
低音域の切れ方が本当にナチュラルで、小型ながら低音域の動きがスペック以上に分かります。不思議な感覚なのですが、よく研究しているんだろうな、という印象。
MA1導入による補正をすれば低音域の濁りが排除されてクリアに鳴る事でここから更に特性を改善可能。ここ数年の大人気も頷けます。
測定可能、かつ小型という要素を活かして、自宅以外にも様々な環境への持ち運びも良いと感じます。今回取り上げた中では唯一電源ケーブルに2ピン(メガネ型)ケーブルを使用するのも様々な環境で使いやすいメリットあり。
MA.1を使用した測定ソフトウェアはマルチチャンネル版もリリースされて、将来的な空間オーディオへの布石として導入もオススメです!
Genelec / 8020D
どんな特徴?
独特な卵形フォルムを持つGenelecは北欧のフィンランド製スピーカーです。エンクロージャーの素材はアルミを採用、金属筐体ですので今の季節はひんやりと冷たく、目を閉じればフィンランドの過ごしやすそうな気候を感じる、、かもしれません。
同一スピーカーでカラーバリエーションが用意されているのもポイントで、プロデューサー・グレー(ダーク・グレー)、ホワイト、そして写真のRAW(無塗装)がチョイスできます。アルミニウムそのままの質感は製造時の色ムラ、スクラッチなどもそのままですので、同じRAWフィニッシュは世界に2つとありません。
Iso-Podというゴム足も付属しますので、インシュレーターや追加のアクセサリー無しで調整が可能です。Iso-Podはかなり賢く、手で前後にずらす事で至極簡単にスピーカーの角度を±でつけられます。8030 / 8330/8331以上の大きさのスピーカーには横置きで使用する為の追加ネジ穴が設けられているので、オリエンテーション変更も簡単です。
どんな人にオススメ?
クーパー天野
音的には特に編集前と編集後の違いが分かりやすいな、という印象。録音の結果のモニターや、整音作業、ミキシング作業に関わる方には非常にオススメです。
また、カラーオプションも有る他、専用のデスクトップスタンドやウォールマウントオプション等が充実しており幅広い設置方法を取れるため、壁面や天井に設置をお考えの方にもフィットします。Genelecへのユーザー登録で保証期間が最長で5年に伸びるのもGood。プロの道具として安心感があります。
俺ならこう使う!!
Vツイン多田
ある種”見え過ぎる”スピーカーの代表格であるgenelecは、音作り〜レコーディング〜編集辺りの、音楽制作における上流の作業をされる方々に愛されているブランドです。
さっき録ったトラックのノイズ探し、モニターとプレイバックの音質変化の無さ、ダイナミクス系プロセッサーのタイム設定のし易さ、、ベースとキックなどの同じ定位/同じ帯域のトラックの相関チェックなど、単品トラックのチェックに非常に優れています。
例えばお家で演奏・録音したものをオンラインで納品される業務形態の方なら、genelecはある種の時短ツールになり得ます。商業スタジオのスタンダードでもあるので、先方でも同じブランドのスピーカーでチェックされる可能性が高く、自宅でOKなら納品先でも似た音質でチェックされる事でしょう。
言い換えると、製品クオリティをもうスピーカーのせいにはできません。怖いですね!
記事内に掲載されている価格は 2024年7月19日 時点での価格となります。
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